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熊本家庭裁判所天草支部 昭和44年(家)63号 審判 1969年7月16日

申立人 岡本達(仮名) 昭三八・六・一一生

右法定代理人親権者母 岡本春子(仮名)

主文

申立人の氏「岡本」を父の氏「山口」と変更することを許可する。

理由

別紙のとおり

(家事審判官 松信尚章)

別紙

本件申立の理由の要旨は「申立人は親権者母岡本春子と山口進治との間に婚姻外の子として出生したが右進治は昭和四三年四月一六日認知した。申立人は出生以来実父母の許で養育されてきたしこの際戸籍上も父の氏を称するのが便宜であるから本件申立をした次第である」というものである。

申立人が岡本春子の非嫡出子として昭和三八年六月一一日出生し、同四三年四月一六日父出口進治より認知されたこと、申立人の親権者が母岡本春子であることは本件記録中の申立人の戸籍謄本によつて明らかである。

山口進治の戸籍謄本岡本春子、山口進治、出口君江に対する各審問の結果を総合すると、申立人の父進治は昭和二六年四月一七日妻君江と婚姻し、夫婦間に長女初子(昭和二六年六月二日生)長男学(昭和二九年一月二〇日生)の二子を儲けたがその後昭和三三年ないし三四年頃妻子を捨てて岡本春子と同棲生活を営むようになつたこと、申立人は出生以来現在まで実父母の許で養育され現に幼稚園に通つているが、父親との姓が異ることに漠然とながら気付いていること、本件申立は申立人本人がいわゆる私生児などと近隣で噂されることに日頃肩身の狭い思いをしてきた母親が、せめて申立人本人を実父の戸籍に入籍させ、名実ともに進治の子として世間一般に認めて貰いたいとの希望から進治を説得し、同人もこれに賛成した上でなされたものであること一方本妻君江は長女、長男と同居し生計をたてているが夫との別居以来全くの没交渉で本件申立についても夫の身勝手であるとして強く反対の意向を示していることがそれぞれ認められる。

以上認定した事情に照らせば、申立人の父と本妻との夫婦関係はもはや完全に破綻し円満な状態に戻ることを期待するのは無理であり、それにも拘らず現在に至るまで離婚の話合がなされていないのは客観的な障害が存在するというよりは、むしろ夫の不行跡に対する本妻の不満、感情的対立に因るものと考えられ、この間の事情は本妻君江としては本件申立が許可された場合には正式の離婚手続をとるつもりである旨述べていることからも窺いうるところである。すでに本件申立人に対する実父の認知によつて、同人の戸籍上婚外子の存在が明らかとなつた以上、長女、長男等の就職等に関し、申立人の入籍がそれほど重大な支障をきたすとは考えられず、むしろ同人らとしても両親の離婚はやむを得ないものとして納得していること、他方申立人としても出生以来父と同居しその保護下にある以上父の氏を称することを望むのは自然であろうし、前述の本妻側に認められる事情と比較した場合本件申立を却下すべき積極的理由を発見できない。

よつて本件申立を認容し主文のとおり審判する。

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